
店舗什器は「デザイン性」や「商品を魅せる機能」に目が行きがちですが、不特定多数のお客様が行き交う商業空間では、「安全性」と「耐久性」の確保が最重要課題です。
日々の激しい使用に耐え、万が一の災害時にも被害を最小限に食い止める。
今回は、店舗を長く安全に運営するために欠かせない、什器設計の基本的なポイントを3つの視点から解説します。
目次
1. 地震対策:転倒と落下を防ぐ「見えない工夫」
地震大国である日本において、什器の転倒防止や商品の落下対策は必須です。
特注什器では、デザイン性を損なわずにこれらの対策を組み込むことが求められます。
- 壁面什器の転倒防止(壁固定)
背の高い壁面什器は、地震時の転倒を防ぐために必ず壁下地(LGSや木下地)にビス等で強固に固定します。
設計段階から下地の位置を把握し、什器の背板の内側など、お客様から見えない位置で固定する納まりにするのが基本です。
- 商品の落下を防ぐ「こぼれ止め」
棚板の前面に、アクリルや金属製の細いバー(こぼれ止め)を設置します。
透明なアクリル板を使用したり、後付け感をなくすために棚板に細い溝(スリット)を掘って差し込む設計にしたりすることで、陳列の邪魔にならずに安全性を高めることができます。
- ガラス飛散防止フィルム
ショーケースなどにガラスを使用する場合、万が一割れても破片が飛び散らないよう、飛散防止フィルムを貼るか、強化ガラスを採用します。

2. 耐久性向上:重さと傷から什器を守る構造設計
店舗什器は、商品の重みによる変形や、お客様の動線で発生する衝撃など、様々なダメージにさらされます。
什器の寿命を大きく延ばすためには、以下の構造的な工夫が必要です。
- 棚板の「たわみ防止」と耐荷重設計
商品の重みで棚板が中央からたわむ(曲がる)のを防ぐため、陳列アイテムに合わせて芯材の厚みを決定します。
スパン(棚の幅)が広い場合や重量物を置く場合は、棚板の内部に鉄芯(フラットバー)を仕込んだり、耐荷重用の金物を選定したりと、図面段階での構造検討が不可欠です。
- 台輪への「ステンレス貼り(巾木)」
掃除機やお客様の靴、ベビーカーなどがぶつかりやすい台輪(一番下の土台部分)には、表面材にステンレス(SUS)などの金属板を貼って保護するのが定番です。
耐久性が飛躍的に向上し、店舗全体の足元が引き締まって見える効果もあります。
- 角の「面取り加工」と「R(アール)加工」
什器の角(コーナー)が尖っていると、ぶつかった際に怪我をする危険性があり、什器自体も欠けやすくなります。
図面上で「3R」や「5R」などと指定し、角を丸く削る「R加工」や斜めに削り落とす「面取り加工」を施すことで、安全性と耐久性の両方を確保できます。
- 水拭きできる素材の選定
床の清掃時に水拭きをする店舗の場合、什器の足元が水を吸って膨張しないよう、耐水性のある素材(耐水合板など)を部分的に使用する配慮も必要です。

3. 防犯対策:見栄えを損なわない「鍵」の配置
レジカウンター内の収納や、高額商品を展示するショーケース、ストッカー(在庫置き場)などには、防犯用の鍵が不可欠です。
- シリンダー錠の仕込み方
鍵穴(シリンダー)が目立ちすぎると、せっかくの洗練されたデザインが損なわれてしまいます。
扉の端や下部など、目立たない位置にシリンダー錠を埋め込むのが特注什器のセオリーです。
扉の厚みとシリンダーの奥行きを正確に計算し、図面に落とし込みます。
- プッシュ錠(プッシュロック)
ガラス引き違い戸などによく使われるのが、鍵を押し込むだけでロックがかかるプッシュ錠です。
見た目がスッキリしており、開閉の操作性も高いため、ショーケースに最適です。

まとめ:安全・耐久性の設計で押さえておくべき5つの考慮ポイント
いかにデザインが優れていても、怪我のリスクがあったり、すぐにボロボロになってしまったりする什器は、良い什器とは言えません。
設計や図面化の段階で、以下のバランスを考慮することが成功の秘訣です。
❶ 地震に備えた、壁下地と連動する「見えない固定」の納まり
❷ 陳列を邪魔しない「こぼれ止め」と「ガラス飛散防止フィルム」の明記
❸ 重さに耐える「棚板のたわみ防止」と、掃除や衝撃から足元を守る「ステンレス巾木」
❹ 怪我のリスクを減らし、什器の欠けを防ぐ角の「面取り・R加工」の指示
❺ 扉の厚みと構造を計算した、デザインに溶け込む「防犯用の鍵」のスマートな配置
特注什器を設計・発注する際は、これらの「安全対策と耐久性」の視点をしっかりと組み込むことで、お客様もスタッフも安心して過ごせる、長寿命で美しい店舗空間を実現することができます。

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