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特注什器の仕上げ加工講座⑨|エイジング加工・アンティーク調仕上げをプロが解説

2026.06.05
什器コラム

特注什器の仕上げをプロが解説する本連載も、いよいよ今回で最終回を迎えます。

これまで、木部塗装や金属のメッキ、ガラスの装飾から張地まで、素材に「美しさ」や「機能」を付加する加工について解説してきました。最後にご紹介するのは、什器に「時間」という付加価値を与える「エイジング加工(アンティーク仕上げ)」です。

アパレル店舗やカフェなどを中心に根強い人気を誇るヴィンテージテイストやインダストリアルデザイン。新品の什器をあえて何十年も使い込まれたかのように見せる、プロのエイジング加工の手法とその注意点を解説します。

エイジング加工とは?「世界観」を作り出す技術

エイジング加工とは、物理的な傷や特殊な塗装、化学反応などを用いて、素材に意図的な経年変化(使い込まれた風合いやサビ、色褪せなど)を施す技術です。

過去の世界観を表現するディズニーランドやUSJなどのテーマパークの装飾でも、このエイジング加工は欠かせない手法として使われています。新しくできたエリアやお店が「新品ピカピカ」のままだと、その場所が持つ歴史やストーリーから浮いてしまい、違和感が出てしまうからです 。

ここで重要なのは、ただ汚く見せるのではなく、「その什器がどのような環境で、どう使われてきたか」というストーリーを表現することです。人がよく触れる角だけ色を剥がす、水が溜まりやすい部分にサビを表現するなど、リアリティのある計算されたエイジングこそが、空間のブランド価値を高めます。

【木材】のエイジング加工手法

木材のエイジングは、主に「物理的なダメージ」と「塗装」の組み合わせで行われます。
ベースとなる木材には、節があり素朴で優しい印象を与える「パイン材」などが、アンティーク調・カントリー調のインテリアによく選ばれます 。

①物理的なダメージ加工(ディストレッシング)

長年使い込まれたことで生じる傷や凹みを、工具を使って人工的に再現します。

  • 傷・打痕の再現
    ハンマーで叩いて凹みを作ったり、キリや釘で虫食いの穴を表現したり、チェーンを叩きつけてランダムな傷をつけます。
  • 角の削り落とし
    人の手がよく触れて摩耗した状態を表現するため、天板や扉の角は全体的に丸みを出します 。このとき、「ぱっと見にはわからないように、均一にならないよう削り方を変える」のが、不自然さをなくすプロの職人技です 。

 

② 塗装によるエイジング

  • レイヤリングと剥がし
    下地の色を塗った上に別の色を重ね塗りし、完全に乾く前に表面をスクレーパーやヤスリで部分的に剥がすことで、塗装が経年劣化した「チッピー(ひび割れ・剥がれ)」な風合いを出します。
  • 色を足す(汚し塗装)
    マットで均一に塗られたベースカラー(ブルーグレーなど)の上から、刷毛や筆、布などを駆使して、あえて「色を足して」使い込まれたような汚れや陰影を表現していきます 。元の塗装を剥がすだけでなく、色を幾重にも重ねることで、アンティーク特有の奥深さが生まれます 。

このように手作業で加工を施すため、同じ形の什器を作っても、よくよく見てみると全く同じものは一つとして存在しません 。それがアンティーク調什器の最大の魅力です 。

 

【金属】のエイジング加工手法

金属のエイジングは、素材そのものを変化させる「化学反応」と、疑似的にサビなどを描く「塗装」に分かれます

① 酸化・腐食の促進(化学反応)

金属のエイジングは、素材そのものを変化させる「化学反応」と、疑似的にサビなどを描く「塗装」に分かれます。

  • 真鍮の古美色(こびしょく)仕上げ
    新品のピカピカした真鍮に薬品(硫化液など)を塗布し、意図的に黒ずませる(酸化させる)加工です。その後、出っ張った部分だけを磨き落とすことで、アンティークジュエリーのような奥深い陰影が生まれます。
  • 鉄の黒皮(くろかわ)風・サビ出し
    鉄を熱した際にできる自然な黒い酸化被膜(黒皮)のムラを活かしたり、促進剤を使って赤サビを発生させたりして、インダストリアルな重厚感を出します。

 

② エイジング塗装(特殊塗装)

サビない素材(ステンレスやアルミ、あるいは木材)に対して、塗料を使って金属のサビや緑青(ろくしょう)を絵画のように描き出す技術です。スポンジで塗料を叩きつけたり、かすれさせたりして、本物と見紛う質感を作り出します。

店舗什器における最大の注意点

エイジングを「止める」技術

DIYの家具と、商業空間の特注什器で決定的に異なるのが「実用性と安全性の担保」です。

リアルなサビやささくれを表現しても、お客様の服にサビが色移りしたり、トゲが刺さって怪我をしてしまっては店舗什器として失格です。

そのためプロのエイジング加工では、絶妙な風合いを作り出した後、必ず最後に「ツヤ消しのクリアコーティング」を全体にしっかりと施し、その状態を完全にパック(保護)します。

「見た目は古く、手触りは滑らかで衛生的」という状態を作ることこそが、特注什器におけるエイジング加工の真髄です。

まとめ仕上げ加工が什器の「個性」を決める

全9回にわたってお届けした「特注什器の仕上げ加工講座」はいかがでしたでしょうか。

什器の図面や形状が同じでも、どのような素材を選び、どのような「仕上げ」を施すかによって、空間に与える印象は全く別のものになります。仕上げ加工は、ブランドの世界観を翻訳し、形にするための最も重要なプロセスのひとつです。

コレカでは、今回ご紹介したような特殊なエイジング加工から、最新のトレンド素材を用いたクリーンな仕上げまで、豊富な選択肢とノウハウで皆様の空間づくりをサポートいたします。デザインのイメージや解決したい課題があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

これまでのシリーズ一覧

特注什器の仕上げ加工講座①|塗装・粉体塗装・メッキ・電着塗装の違いと選び方をプロが解説

特注什器の仕上げ加工講座②|木口処理・エッジ仕上げの種類と特徴をプロが解説

特注什器の仕上げ加工講座③|ステンレスの研磨仕上げ(ヘアライン・鏡面・バイブレーション)の違いをプロが解説

特注什器の仕上げ加工講座④|化粧シート(ダイノック・リアテック)とメラミンの違い・選び方をプロが解説

特注什器の仕上げ加工講座⑤|サイン・ロゴ入れ加工(切り文字・シルク印刷・CS・UV印刷)の種類と選び方をプロが解説

特注什器の仕上げ加工講座⑥|木部塗装(クリア・染色・オイル)の種類と選び方をプロが解説

特注什器の仕上げ加工講座⑦|ガラス・アクリルの装飾加工(サンドブラスト・エッチング・フィルム貼り)の種類をプロが解説

特注什器の仕上げ加工講座⑧|什器の張地(ファブリック・ビニールレザー・本革)の特性と選び方

 

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