
特注什器において、ガラスやアクリルといった「透明素材」は、空間に抜け感を与え、商品を美しく見せるために欠かせない存在です。しかし、透明なまま使用するだけでなく、表面に装飾加工を施すことで、什器の表情は劇的に変わります。
「収納内部を上品に目隠ししたい」 「LED照明の光を柔らかく拡散させたい」 「ブランドロゴを高級感のある手法で入れたい」
このようなご要望を実現するのが、透明素材への装飾加工です。今回は、特注什器の製作でよく用いられる代表的な装飾加工である「サンドブラスト」「エッチング」「フィルム貼り」を中心に、それぞれの特徴と選び方、プロ目線の注意点を詳しく解説します。
目次
透明素材に装飾加工を施す3つの目的
具体的な加工方法を見る前に、什器においてガラスやアクリルに装飾加工を施す主な目的を整理しておきましょう。
- 透け感のコントロール(目隠し・パーテーション機能)
ストックの収納部や、レジカウンターの手元など、「見せたくない部分」を隠しつつ、光は通すことで圧迫感を軽減します。
- 光の演出(導光・拡散効果)
加工によって表面をすりガラス状にすることで、LEDなどの光源から出る光を柔らかく拡散させ、面全体を美しく光らせる(面発光)効果が生まれます。
- 意匠性の向上とブランド表現
ロゴマークやオリジナルのパターン(模様)を描き出すことで、什器単体での高級感やブランドアイデンティティを確立します。
① サンドブラスト加工|深さや立体感を出せる定番技法
サンドブラスト加工は、コンプレッサーの圧縮空気を使って、ガラスやアクリルの表面に細かい砂(研磨材)を強く吹き付け、表面を削ってすりガラス状にする加工です。
特徴とメリット
- 自由なデザインが可能: マスキング(保護シート)を使うことで、ロゴや複雑な柄、細いラインも正確に表現できます。
- 立体感の演出(段彫り・深彫り):砂を当てる時間や圧力を変えることで、削る「深さ」を調整できます。立体的な陰影をつけたいロゴサインなどに最適です。
- ガラス・アクリル両方に対応:素材を選ばず加工が可能です。
プロの注意点:メンテナンス性と「手垢(指紋)」対策
サンドブラスト加工を施した面は、微細な凹凸ができるため、手の皮脂や汚れが入り込むと非常に落ちにくいというデメリットがあります。手が触れる場所(カウンターの天板や扉など)に使用する場合は、汚れを防ぐための「クリアコーティング(防汚処理)」を併用することを強くおすすめします。の調整(艶消し具合)によって、非常にナチュラルな風合いを出せます。

② エッチング加工|なめらかで上品な仕上がり
エッチング加工は、フッ化水素酸などの薬品を用いてガラスの表面を腐食(化学変化)させ、すりガラス状にする加工です。(※主にガラスに対して行われます)。
特徴とメリット
- シルクのようななめらかさ:サンドブラストに比べて表面の凹凸が非常にきめ細かく、シルクのようになめらかな手触りと、均一で上品な透け感が得られます。
- 汚れに強い:サンドブラストよりも皮脂汚れがつきにくく、拭き取りなどのメンテナンスが容易です。いわゆる「フロストガラス(タペガラス)」の多くは、このエッチング加工で作られています。
プロの注意点:細かな柄付けには不向きな場合も
全面をすりガラス状にするのには非常に適していますが、薬品を使う特性上、サンドブラストのような「深い彫り」による立体感の表現や、極めてシャープなマスキングラインを出すのにはあまり向いていません。

③ フィルム貼り(ガラスフィルム)|機能性と手軽さを両立
フィルム貼り加工は、ガラスやアクリルの表面に、意匠性を持たせた専用の化粧フィルム(ウインドウフィルム)を貼り付ける方法です。3Mの「ファサラ™」やサンゲツの「クレアアス」などが有名です。
特徴とメリット
- 圧倒的なバリエーション:すりガラス調、和紙調、グラデーション、ストライプ、カラーフィルムなど、デザインの選択肢が最も豊富です。
- 優れた機能性(飛散防止):意匠性だけでなく、万が一ガラスが割れた際の「飛散防止」効果を兼ね備えているため、安全性・防災性が求められる公共施設や大型商業施設の什器に最適です。
- 後施工・貼り替えが可能:現場での施工も可能で、デザインに飽きた際や店舗リニューアルの際に貼り替えることができます。
プロの注意点:アクリルへの施工時は「アウトガス(気泡)」に注意
ガラスへのフィルム貼りは問題ありませんが、アクリル板に直接フィルムを貼る場合は注意が必要です。アクリル板は環境変化により微量のガス(アウトガス)を放出する性質があり、時間が経つとフィルムの間に気泡(水膨れのようなもの)が発生することがあります。アクリルに貼る場合は、ガス抜け対策が施された専用のフィルムを選ぶか、ポリカーボネートを使用するなどの工夫が必要です。

その他の装飾加工(印刷・レーザー)
上記の3つ以外にも、特注什器では以下のような手法が使われます。
- シルクスクリーン印刷 / UVインクジェット印刷
透明素材の裏面(または表面)にインクをのせてデザインを施します。多色使いや写真表現、グラデーションの出力に向いています。 - レーザー彫刻
アクリルの加工でよく使われます。レーザーの熱で表面を溶かして白濁させたり、彫り込んだりします。細かな文字入れに適しており、側面にLEDを当てると彫刻部分だけが美しく発光する「導光板」のサイン什器などによく用いられます。

【比較表】目的別・コスト別の選び方まとめ
それぞれの加工の特性をまとめました。用途に合わせて最適な手法をお選びください。
| 加工方法 | 質感・仕上がり | デザインの自由度 | 汚れにくさ(防汚性) | コスト目安 | 主な用途・おすすめシーン |
|---|---|---|---|---|---|
| サンドブラスト | ザラザラ(マット) | ◎(深彫り・立体感も可) | △(コーティング推奨) | 中〜高 | ロゴサイン、陰影を出したい意匠部 |
| エッチング | なめらか(シルク調) | 〇(全面加工向き) | 〇 | 中 | 上品な目隠し、ショーケースの底板 |
| フィルム貼り | フィルムによる | ◎(グラデーション等) | ◎ | 低〜中 | 飛散防止が必要な場所、柄物、グラデーション |
まとめ
ガラスやアクリルへの装飾加工は、単なる「目隠し」にとどまらず、光のコントロールやブランド表現を通じて、特注什器のクオリティを一段引き上げる強力なツールです。
「この什器の背板を、下から上へ徐々に透明になるグラデーションにしたい」 「LEDを当てたときに一番綺麗にロゴが浮き出る加工はどれ?」 「手が触れる場所なので、メンテナンスしやすい方法を知りたい」
そんなお悩みやご要望がありましたら、ぜひコレカにご相談ください。什器の用途、ご予算、設置環境(安全性)、そしてデザインのこだわりに合わせて、最適な素材と加工方法の組み合わせをご提案いたします。

それでは、また次回。特注什器づくりのための仕上げ加工シリーズでお会いしましょう!
これまでのシリーズ一覧
・特注什器の仕上げ加工講座①|塗装・粉体塗装・メッキ・電着塗装の違いと選び方をプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座②|木口処理・エッジ仕上げの種類と特徴をプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座③|ステンレスの研磨仕上げ(ヘアライン・鏡面・バイブレーション)の違いをプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座④|化粧シート(ダイノック・リアテック)とメラミンの違い・選び方をプロが解説
この記事の関連トピックス


