
特注什器の仕上げをプロが解説する本連載。 前回(Vol.7)では、空間に抜け感と演出効果をもたらす「ガラス・アクリルの装飾加工」について解説しました。
木材や金属、ガラスといった「硬い素材」が什器の骨組みを形成する一方で、お客様が直接触れるフィッティングルームのスツールや待合ベンチ、あるいはジュエリーショーケースの底面などには、「柔らかさ」や「温もり」を付加する「張地(張り加工)」が欠かせません。
今回は、什器製作で使われる代表的な3つの張地(ファブリック・ビニールレザー・本革)の特性と、商業空間ならではの「失敗しない選び方の基準」をプロの目線で解説します。
目次
什器における「張地」の役割とは?
什器に張地を施す最大の目的は、「触り心地(ユーザー体験)の向上」と「視覚的な高級感・温かみの演出」です。 硬質な空間にファブリックやレザーが少し入るだけで、店舗全体の印象はぐっと引き締まり、居心地の良さが増します。また、時計やアクセサリーなどの商品を傷つけずに美しくディスプレイするための「下敷き」としても重要な役割を担います。

代表的な張地の種類とプロの視点
①ファブリック(布地)
糸を織り上げて作られる布製の張地です。平織り、起毛(ベルベット・モケットなど)、ジャガードなど、織り方によって無数の表情があります。
- 特徴
温かみがあり、カラーや柄のバリエーションが最も豊富。通気性が良く、季節を問わず快適な肌触りです。 - プロのこだわりポイント(汚れ対策)
飲食店や不特定多数の人が利用するベンチでは、飲みこぼしや皮脂汚れが染み込みやすいのが弱点です。そのため、水や汚れを弾く「撥水・防汚加工(パールトーン加工など)」が施された商業用の生地を選ぶか、後加工でコーティングを施すのがプロの鉄則です。

② ビニールレザー(PVC・PU / 合成皮革)
布地の表面に合成樹脂を塗布し、本革のようなシボ(シワ模様)を型押しした人工素材です。
- 特徴
水や汚れに非常に強く、サッと拭き取れるメンテナンス性の高さが最大の魅力です。コストパフォーマンスにも優れています。 - プロのこだわりポイント(耐アルコール・耐次亜塩素酸)
昨今の店舗什器において、最も需要が高いのがこのビニールレザーです。特にクリニックや飲食店では、日々のアルコール消毒で表面がボロボロにならないよう、必ず「耐アルコール性・耐次亜塩素酸」の機能を持った高耐久なPVC(ポリ塩化ビニル)レザーを選定します。

③ 本革(天然皮革)
牛などの天然の皮を鞣(なめ)して作られる最高級の素材です。
- 特徴
人工物には出せない圧倒的な高級感、しっとりとした手触り、そして使い込むほどに味が出る「経年変化(エイジング)」が楽しめます。 - デメリットと注意点
非常に高価で、水濡れや乾燥によるひび割れに弱く、定期的なオイルメンテナンスが必要です。また、天然素材ゆえに「傷」や「サイズ(1頭分の大きさ)」にバラつきがあるため、広い面積に継ぎ目なく張るのには適していません。ハイエンドなジュエリーケースの底面や、VIPルームのチェアなど、「ここぞという見せ場」に絞って使用するのがセオリーです。

張地選びの比較まとめ
| 素材 | コスト感 | メンテナンス性 | 高級感・意匠性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ファブリック | 低〜中 | △(防汚加工を推奨) | 〇(温かみ・柄) | アパレルのスツール、雑貨ディスプレイ |
| ビニールレザー | 低〜中 | ◎(水拭き・消毒可) | △〜〇 | 飲食店のベンチ、クリニックの待合室 |
| 本革 | 非常に高 | ×(専用手入れ必須) | ◎(最高級) | 高級時計・宝飾品のケース、VIP向け什器 |
商業施設で必須となる「防炎機能」の確認
店舗什器の張地を選ぶ際、デザイン以上に厳しくチェックすべきなのが「防炎性」です。 地下街や高層ビル、一定規模以上の商業施設では、消防法により「防炎物品」の使用が義務付けられているケースが多々あります。そのため、カタログのデザインだけで決めるのではなく、必ず「防炎マーク(防炎認定品)」を取得している生地かどうかを確認しなければなりません。
まとめ:デザインと機能(運用)のバランスが鍵
什器の張地は、空間の印象を左右するだけでなく、法規や日々のメンテナンス性、アルコール消毒への耐性など、店舗の運用に直結する重要な要素です。
コレカでは、空間のコンセプトに合わせた意匠性はもちろん、こうした実際の運用面や安全性も総合的に考慮し、最適な張地をご提案しています。張地選びや衛生面でのご不安があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

それでは、また次回。特注什器づくりのための仕上げ加工シリーズでお会いしましょう!
これまでのシリーズ一覧
・特注什器の仕上げ加工講座①|塗装・粉体塗装・メッキ・電着塗装の違いと選び方をプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座②|木口処理・エッジ仕上げの種類と特徴をプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座③|ステンレスの研磨仕上げ(ヘアライン・鏡面・バイブレーション)の違いをプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座④|化粧シート(ダイノック・リアテック)とメラミンの違い・選び方をプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座⑤|サイン・ロゴ入れ加工(切り文字・シルク印刷・CS・UV印刷)の種類と選び方をプロが解説
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