
特注什器の素材を掘り下げる本連載。今回は、壁面や床だけでなく、近年はカウンター什器の腰や天板にも多用される「タイル」について解説します。
カフェやベーカリー、アパレルやコスメショップなどで、タイル貼りの什器は圧倒的な存在感と「本物感」を演出します。しかし、木やメラミンといった一般的な素材とは異なり、重量や施工方法、割れのリスクなど、什器に使うからこそ知っておくべき注意点が多くあります。
今回は、什器製作のプロの視点から、タイルの種類の違いと、什器に取り入れる際のメリット・デメリット、選び方のポイントを解説します。
目次
タイルの種類(材質による分類と特徴)
タイルは原料や焼成温度によって大きく3つに分類され、それぞれ吸水率や硬さが異なります。什器のどこに使うか(天板か、腰壁か)によって使い分けが必要です。
① 磁器質(じきしつ)タイル
- 特徴: 1250℃以上の高温で焼成され、非常に硬く、吸水率が1%以下と低い。
- メリット: 耐久性、耐水性、耐凍害性に優れています。汚れが染み込みにくく、メンテナンスが楽です。
- 什器への用途: 【天板・飲食カウンター】に最適。水拭きが必要な場所や、食器が当たる場所でも傷がつきにくいです。
② 陶器質(とうきしつ)タイル
- 特徴: 1000℃程度の低温で焼成。多孔質で吸水性が高く(22%以下)、叩くと鈍い音がします。
- メリット: 寸法精度が高く、鮮やかな色や複雑なレリーフ(凹凸)など意匠性に富んでいます。
- 什器への用途: 【腰壁・ディスプレイ台の側面】など、水や衝撃が直接かからない垂直面。内装壁用タイル(サブウェイタイルなど)の多くがこれにあたります。
③ せっ器質(せっきしつ)タイル
- 特徴: 磁器質と陶器質の中間の性質。表面に釉薬(うわぐすり)をかけない「土もの」の風合いが魅力です。
- 什器への用途: 和風店舗や、ラフなインダストリアルデザインのカウンター腰などに使われます。

デザイン・形状による分類
什器デザインでよく使われる代表的な形状を紹介します。
モザイクタイル
一辺が50mm以下の小さなタイル。シート状に連結されて販売されていることが多く、R(曲面)のカウンター腰にも施工しやすいのが特徴です。色の違うタイルを組み合わせて「店舗のロゴ」や「サイン(文字)」を描く手法も人気です。カッティングシートにはない、レトロで可愛らしい雰囲気を演出できます。

サブウェイタイル(長方形タイル)
ニューヨークの地下鉄で使われていたような、150mm×75mm程度の長方形タイル。カフェスタイルの定番で、目地の色(白タイルに黒目地など)で印象がガラリと変わります。

大判タイル
600角(600mm×600mm)以上の大きなタイル。石目調やコンクリート調のものも多く、継ぎ目(目地)が少ないため、モダンで高級感のあるカウンターを作ることができます。

什器にタイルを使う際の注意点
建築の壁に貼るのとは異なり、「動く可能性のある家具(什器)」にタイルを貼る場合は、以下の点に注意が必要です。
- 「重量」と「キャスター」の問題
タイルは非常に重い素材です。下地となる木工什器も、その重さに耐えられるよう厚めの合板で補強する必要があります。また、キャスター付きの可動什器にする場合、移動時の振動でタイルや目地が割れるリスクがあります。タイル貼りの什器は、基本的に「固定設置」が推奨です。
- 「目地(めじ)」の汚れ対策
天板に使う場合、タイル自体は汚れませんが、「目地(セメント)」は油やコーヒーを吸い込んでシミになります。
飲食店の天板には、吸水性の低い「樹脂系目地(スーパークリーンなど)」やグレー・黒などの濃い色の目地を選ぶのが鉄則です。
- 「角(コーナー)」の納まり
タイルの側面(小口)は、釉薬がかかっておらず土の色が見えている場合があります。
・ トメ加工: タイルを45度にカットして突き合わせる(綺麗ですが割れやすい)。
・ 役物(やくもの): コーナー専用のL字型タイルを使う(種類が限られる)。
・ 見切り材: ステンレスや真鍮の金物を角に入れる(シャープで丈夫、什器ではこれが一般的)。


コストを抑えるためのポイント
タイル貼り什器は、どうしてもコストが高くなりがちです(木工本体費+タイル材料費+左官施工費)。コストを抑えるには以下の方法があります。
大判タイルを天板だけに使う
手間のかかる小粒なモザイクタイルではなく、大判セラミックタイルを天板に置き、木口を木枠で囲う仕様にすると、施工費を抑えつつ高級感が出せます。
タイル風シート(ダイノック・リアテック)を活用する
遠目には本物に見える高品位な塩ビシートもあります。重量も軽く、割れる心配もないため、高い場所に設置する棚や、頻繁に動かすワゴンにはシートが適しています。

まとめ:素材選びと施工方法で「割れ」を防ぐ
タイルは「焼き物」ならではの重厚感と美しさがあり、店舗の顔となるカウンターには最適な素材です。 しかし、適材適所を誤ると「すぐに欠けてしまった」「目地が汚れて不潔に見える」といったトラブルになりかねません。
コレカでは、使用場所(天板か側面か)や店舗の業態に合わせて、最適なタイルの種類(磁器・陶器)や目地材、そして割れを防ぐ下地設計までトータルでご提案します。「憧れのタイルカウンターを作りたいけれど、メンテナンスが心配」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

それでは、また次回、特注什器づくりのための素材講座シリーズでお会いしましょう!
これまでのシリーズ一覧
・特注什器の素材講座①|スチール・ステンレス・アルミの違いをプロが解説
・特注什器の素材講座②|化粧板とは?メラミン・ポリ・突板の違いと選び方をプロが解説
・特注什器の素材講座③|プラスチック・樹脂の違いとアクリル板をプロが解説
・特注什器の素材講座⑤|合板・MDF・パーティクルボードの特徴と違いをプロが解説
この記事の関連トピックス


