
特注什器の仕上げをプロが解説する本連載。 Vol.4では「木目調シート(ダイノックなど)」や「メラミン化粧板」といった、メンテナンス性に優れた工業製品の木目仕上げについて解説しました。
しかし、高級ブランドの陳列棚や、格式ある飲食店のカウンター、レセプションの天板など、ここぞという場所にはやはり「本物の木(無垢材や突板)」を使いたいというオーダーは根強くあります。
本物の木を使用する場合、必須となるのが「塗装(仕上げ)」の工程です。 木はそのままでは汚れやすく、湿度で反ってしまうため、必ず保護が必要です。そして、この「塗装」の選び方一つで、什器の高級感やメンテナンス性は劇的に変わります。
今回は、特注什器における「木部塗装」の主要な種類(ウレタンクリア・染色・オイル)と、それぞれの適材適所な選び方について解説します。
目次
なぜ「木部塗装」が必要なのか?
本物の木(無垢材・突板)に塗装を行う目的は大きく2つあります。
- 保護(Protection): 木材の大敵である「汚れ」「水分」「乾燥による割れ・反り」から素材を守り、什器の寿命を延ばすため。
- 意匠(Design): 木目を美しく際立たせたり(濡れ色効果)、空間に合わせて色味を調整したり、艶(ツヤ)をコントロールして質感を高めるため。
この2つのバランスをどう取るかで、選ぶべき塗装方法が変わってきます。
① ウレタンクリア塗装(最も一般的・高耐久)
店舗什器において、最も採用率が高いのが「ウレタンクリア塗装」です。 木材の表面にポリウレタン樹脂の塗膜を作り、コーティングする方法です。
特徴
- 耐久性が高い: 塗膜が木材を覆うため、水拭きが可能で、傷や汚れに強い。
- メンテナンスが楽: 飲食店テーブルなど、アルコール消毒や水拭き頻度が高い場所に最適です。
意匠のポイント:艶(ツヤ)の調整
「ウレタン塗装=ピカピカして安っぽい」というイメージをお持ちの方もいますが、それは昔の話です。現在は艶の調整(艶消し具合)によって、非常にナチュラルな風合いを出せます。
- 全艶消し(マット): 光沢を完全に抑えた仕上げ。オイル仕上げに近い、素朴でモダンな印象になります。近年のトレンドです。
- 3分艶・5分艶・7分艶: 少し光沢を残し、高級感や「きちんと塗装されている感」を出したい場合に選びます。
- 全艶(鏡面): ピアノの塗装のようにピカピカに磨き上げる仕上げ。非常に高級感が出ますが、コストも高くなります。
「目弾き(めはじき)」と「目潰し(めつぶし)」
プロのこだわりポイントとして、導管(木の凹凸)の処理があります。
- オープンポア(目弾き): 木の凹凸(導管)を埋めずに塗膜を乗せる手法。木の手触りや質感が残ります。
- クローズドポア(目潰し): 導管を塗料で埋めて平滑にする手法。フラットで高級感が出ますが、木材らしさは少し減ります。

② 染色塗装(着色ウレタン)
「オーク材の木目は好きだが、色はウォールナットのような濃い茶色にしたい」「店内の雰囲気に合わせてグレー味を帯びさせたい」といった場合に用いるのが染色塗装(ステイン塗装)です。
特徴
- 木目を活かしたカラーリング: ベタ塗りのペンキとは異なり、木目に染料を染み込ませるため、木の表情を残したまま色を変えられます。
- 色合わせが可能: 既存の家具や、床の色に合わせて色味を調色(調合)することができます。
注意点
通常、染色の後には保護のために「ウレタンクリア」を上塗りします。そのため、耐久性はウレタン塗装と同等です。 ただし、木材の個体差(吸い込み具合)によって色の出方が変わるため、厳密な色合わせが必要な場合は、事前に同じ材でサンプルを作成することをおすすめします。

③ オイル仕上げ(究極の質感)
植物性のオイルを木材の内部に浸透させる仕上げ方法です。塗膜を作らず、木そのものの手触りを楽しみます。
特徴
- 最高の質感: 木が本来持つ温かみや手触りをダイレクトに感じられます。しっとりとした「濡れ色」になり、木目が美しく浮かび上がります。
- 経年変化(エイジング): 使い込むほどに味わい深くなります。
デメリットと注意点
- 水や汚れに弱い: 塗膜がないため、水滴を放置すると「輪ジミ」ができやすいです。
- 定期的なメンテナンスが必要: 油分が抜けてカサついてくるため、定期的にオイルを塗り直す必要があります。

プロが教える「選び方」の基準
どの塗装を選べばよいか迷ったときは、「設置場所」と「誰が管理するか」で判断しましょう。
| 比較項目 | ウレタンクリア(艶消し) | 染色塗装 | オイル仕上げ |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | 飲食テーブル、商品陳列棚、受付 | デザイン重視の壁面、什器 | 高級ブティック、住宅、役員室 |
| 見た目 | 自然だが、薄い膜感はある | 木目を活かした自由な色 | 最も自然的で高級感がある |
| 耐久性 | ◎ 強い(水拭きOK) | ◎ 強い(水拭きOK) | △ 水ジミに注意 |
| コスト | 標準 | やや高い(工程が増えるため) | 標準~やや高い |
| おすすめ | 店舗什器の9割はこれ | 色にこだわりたい時 | 経年変化を楽しめる環境 |
迷ったら「ウレタン・全艶消し・オープンポア」
近年の商業施設やアパレル店舗で「木を使いたい」という場合、メンテナンス性と意匠性のバランスが最も良いのが「ウレタンクリア塗装の全艶消し(オープンポア仕上げ)」です。 一見するとオイル仕上げのようなマットな質感でありながら、しっかり塗膜があるため水拭きや汚れに耐えられます。
まとめ:木部塗装はサンプルの確認が重要
「木」は自然素材であるため、同じ塗装指示でも、木の種類や個体差によって仕上がりの表情が変わります。
カタログや小さなチップだけで決めるのではなく、「実際に使用する木材(突板)に、希望の塗装をしたサンプル」を作成して確認することをおすすめします。特に染色塗装や艶の加減は、照明の下で確認するとイメージのズレを防げます。
コレカでは、ご希望のデザインや用途に合わせて、最適な木材の選定から塗装方法のご提案、サンプル作成までトータルでサポートいたします。「理想の木の質感」を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

それでは、また次回。特注什器づくりのための仕上げ加工シリーズでお会いしましょう!
・特注什器の仕上げ加工講座①|塗装・粉体塗装・メッキ・電着塗装の違いと選び方をプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座②|木口処理・エッジ仕上げの種類と特徴をプロが解説
・特注什器の仕上げ加工講座③|ステンレスの研磨仕上げ(ヘアライン・鏡面・バイブレーション)の違いをプロが解説
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