
商品をアピールするためのプロモーション什器。
その什器を作る際に、ロゴや商品名などサインをつけたいと言われることが多いです。
どんなロゴで、どれぐらいのサイズなのか。
どこにつけて、どれぐらいの数を作るのか。
平面的なものがいいのか、立体的なものがいいのか。
サインは奥が深いです。
今回は、平面的なサインについてのお話です。
平面的なサインの種類としてはカッティングシート、シルク印刷、UV印刷をコレカでは採用しています。
カッティングシート
カッティングシートとは、塩化ビニール製の単色フィルムで裏に粘着シートがついているシートです。
主なメーカーは
・中川ケミカル:カッティングシート
・3M:ダイノック
・サンゲツ:リアテック
などです。
カラー塩ビシートを使ったサインを業界ではカッティングシート(CSサイン)と呼んでいますが、実は中川ケミカルというメーカーの登録商標だったりもします。
これらの塩化ビニールシートを、ロゴや文字などの形に切り抜いて什器に貼りつけてロゴや文字などのサインを製作します。
シート自体を切り抜いて貼り付けるため、シャープで美しいラインを出せるのが特徴です。
Illustratorなどのデザインデータを元にカッティングプロッターと呼ばれる機械でシートをロゴや文字の形にカットします。
切り抜いたロゴをそのまま貼ろうとしてもバラバラになってしまうため、転写シートと呼ばれる透明または半透明の粘着フィルムに一度貼り付けます。

貼り付ける位置を決めて、マスキングテープなどで仮固定をします。
台紙を外して、什器に貼りつけたらスキージーと呼ばれるヘラでカッティングシートをしっかりと密着させます。

密着させた後、転写シートを剥すとデータ通りの間隔でサインを貼り付けることができました。

木工に限らず、アクリルやスチールガラスなどにも貼ることができます。
施工性も抜群で現場などで貼ったり、剥して貼りかえることができるのも魅力の一つです。
1枚から複数枚でもコストを抑えて作ることができるのでカッティングシートサインは重宝されています。

貼り替えることができるというのは、メリットでもありデメリットでもあります。
カッティングシートはあくまで粘着シートなので、劣化や頻繁に拭いたりすると自然と剥がれてしまうことがあります。
またプロッターという機械でカットするのであまり小さい文字には対応ができません。
場合によっては、手作業で切り抜くこともあるのですが登録商標のⓇなど線が細く曲線が多いものは限界があります。
シルク印刷
シルク印刷は、シルクスクリーンと呼ばれる版にインクをつけて印刷する方法です。
カッティングシートはシートの色に限りがありますが、シルク印刷はインクを使用するので色の再現性が高く色も鮮やかです。
色毎に版を製作する必要があり、1色1色印刷していきます。
一度、版を作ってしまえば何度でも印刷が可能なので量産するのに向いています。
版は、軽微な変更でも作り直しが必要なので注意が必要です。
版をたくさん作るとその分、版代がかかるので単色か多くても3色ぐらいまでのデザインの物が多いです。

シルク印刷は、インクを表面に乗せて乾燥させて定着させます。
耐久性に優れているインクなので、色褪せたり簡単に剥がれないのも特徴の一つです。
文字の種類にもよりますが、小さい文字でも製作可能です。
カッティングシートは小さい文字などの場合には粘着面が少ないので剥がれてしまうこともしばし。
拭いたときにうっかり取れてしまうなんてこともあります。
写真のようなコスメを試す什器などは、汚れやすい什器なので拭く機会も多いかと思います。
アルコールなどで剥がれたり溶けたりする心配もないので安心です。
シルク印刷だと剥す方が難しいぐらいで、過去には印字を変更したいから剥してほしいと言われたのをお断りしたぐらいです。

表面にインクをのせるので乾燥が必要になります。
乾燥は自然乾燥なので、季節によって多少前後することも。
多数の色を使用すると、完全に乾ききってから次の印刷をする必要があるので時間が必要になります。
また版の製作も必要なので、納期に注意が必要です。
UV印刷
UV印刷は、紫外線硬化型インキというインクを使用して紫外線(UV)を照射することでインクを瞬時に硬化させる方法です。
イメージ的には、ジェルネイルと似ています。
シルク印刷が通常のネイルだとすると、UV印刷はジェルネイルとなります。
UVを当てて硬化乾燥を待つ必要がないため、スピーディーに仕上げられるのが大きなメリットです。
シルク印刷と違い版を必要としないので、単色の文字やシンプルなロゴだけでなく、グラデーションや写真など多彩なバリエーションの物を印刷することができます。
UV印刷用は、専用のプリンターを使用します。
そのため、プリンターに入るサイズの物しか印刷することができません。
什器の形になった完成品は入らず、組み上げる前の材料の状態で印刷する必要があります。

店舗に設置するコスメ用の陳列什器を製作した際に、UV印刷を採用しました。
シルク印刷をするには、版をいくつもつくらなければいけないので勿体ない。
ローマ字の「i」や「,」など小さい物が多くカッティングシートでは剥がれてしまう可能性があり、絶対にNGでした。
什器の製作の方法としては、メラミン化粧板を什器のサイズより一回り大きくカットして、UV印刷の工場に送ります。
工場で印刷をしてもらい、木工所に送り返してもらって使うサイズにカットして什器を製作しました。
このUV印刷ですが、シルク印刷に比べるとインクの厚みが薄いので、シルク印刷に比べると耐久性が劣ります。
メラミン化粧板やポリ合板、アクリルには比較的インクが定着しやすいです。
しかしスチールなどの金属製品やガラスにはインクが定着し辛く、粘着テープなどを直接貼ってしまうと印刷が取れてしまうことも。
また、今回ご紹介したサインの中では一番コストがかかります。
1台しか製作しないような什器で、カッティングシートを使用するのが難しい場合には、UV印刷のほうが安くすむ場合もあります。
このコスメ什器は1台しか製作せず、版も複数必要になる什器だったので結果的にはUV印刷のほうが安く済みました。
まとめ
「けっきょく、どれが一番いいの!?」
となるかもしれませんが、色々な条件によって変わってきます。
どの方法が一番適切かは、お打ち合わせでヒアリングしながらご提案させていただくのが一番かと思います。
<仕上げ方法の比較一覧>
| 項目 | カッティングシート | シルク印刷 | UV印刷 |
|---|---|---|---|
| 仕上がりの特徴 | シートを貼り付ける方法。輪郭がシャープで質感のある仕上がり。マット・グロス・メタリックなどバリエーション豊富。 | インクを厚くのせる印刷方法。発色が鮮やかで、立体感や存在感のある仕上がり。 | 紫外線でインクを瞬時に硬化させる印刷。フラットで光沢のある仕上がり。写真やグラデーションも再現可能。 |
| 表現の得意分野 | 単色ロゴ・サイン表示 | ロゴマーク・単色デザイン・厚盛り表現 | フルカラー印刷・写真・グラフィック表現 |
| 対応素材 | メラミン化粧板・ポリ合板・木・アクリル・ガラス・スチールなど 多様な素材に対応可能 | メラミン化粧板・ポリ合板・木・アクリル・ガラス・スチールなど 多様な素材に対応可能 | メラミン化粧板・ポリ合板・木・アクリルなど 平面のみでサイズに制限がある |
| 耐久性 | 中程度 屋内外どちらでも対応可能 (屋外の場合は専用の物を使用) 剥がれに注意 | 高耐久 摩擦や屋外環境にも強い | 中〜高 屋内什器向け、擦れに弱い |
| 立体感 | 中程度。 貼り付けによるわずかな段差感あり | 強い。 厚いインク層による盛り上がり感 | 少なめ。 フラットで滑らかな仕上がり |
| コスト感 | 比較的安価。 1枚からOK 小ロット~中ロット カット費用と貼り作業のみ | 版製作が必要なため 中〜大ロット向き | 数量にもよるが一番高価 1枚から小ロット |
| 納期 | 短い。データカット・貼り作業で完結 | やや長い。版製作と乾燥工程あり | 短い。印刷後すぐに硬化し即出荷可能 |
| デザイン変更 | シートを貼り替えるだけで簡単に変更可能 | 版を作り直す必要あり | データ修正のみで変更可能 |
| 主な使用例 | 店舗什器・イベントブース・店舗ロゴサイン | ブランド什器・スチール什器・屋外サイン | デザイン什器・POP・アクリルサイン・プレート印刷 |